どうにもこうにも~出会い編~
 肩をすくめ身を固くしている。後ろから彼女の様子を窺うと、顔は上気し固く口を閉じている。この満員電車の空気のせいか、俺の存在がそうさせているのか。まさか気持ち悪がられてるんじゃ。こんな大男に後ろに立たれて怖がっているのかもしれない。

 ポニーテールに髪を結んで露わになっている首筋がふと目に入った。瑞々しく透明感のある肌が妙に色っぽい。彼女に対する不安があるはずなのに、ムラムラと湧き起る欲望が俺を支配しようとしている。欲望と理性の間で自己嫌悪に陥る。

いい年して、なんて嫌な中年オヤジなんだ。性欲というのは本当に厄介なものだ。早く駅に着いてくれ。

 電車を降りた後も、やはり彼女の様子はおかしかった。手荒な真似をしてしまったし、俺みたいな中年男と身体が密着して気分を害してしまったのかもしれない。

 「西島さん、ありがとうございました」

 しかし彼女は俺にお礼を言う。しかも最近彼女がアルバイトしている居酒屋に顔を出さない俺のことを心配していたらしい。勤め先の商社で今取り組んでいる事業が大詰めを迎えて数週間忙しかったのだが、そろそろ落ち着こうとしているところだった。
< 14 / 104 >

この作品をシェア

pagetop