どうにもこうにも~出会い編~
 初めてあの居酒屋を訪れたのは2年ほど前だったか。この居酒屋を見つけたのは偶然だった。その頃はあまり仕事がうまくいってなくて、その日も落ち込んでいた。

その日は気分転換のつもりで行ったことのない居酒屋に行こうと思い立った。それで会社帰りにたまたま入った路地裏で見つけた居酒屋が、石原慧がアルバイトをしている居酒屋だった。


 「いらっしゃいませー!」


 居酒屋の暖簾をくぐると店内に明るい声が響く。彼女だ。

 「お好きな席にどうぞ!」

 俺は、その日以来、落ち込むことがあると度々彼女のいる居酒屋へ足を運んだ。暖簾をくぐった瞬間に響く明るい声と満面の笑顔で迎えられる。俺はいつも心が和んだ。2年間、俺は彼女とまともに会話をしたことがなかった。

あの雨の日が来るまでは…。

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