どうにもこうにも~出会い編~
「もう帰ったのかと思ってましたけど…」

「前々から進めていたプロジェクトが一段落ついたんですが、店を出ようとしたところで、トラブルがあったと部下から電話があって、会社に戻らなければならなくなったんです。急ぎだったものですから走りましたよ」

「それは大変でしたね。お疲れ様でした」

「ありがとうございます。まぁ一応部長なので、責任は私にありますから」

「西島さん、まだ若そうなのに、偉い役職に就いてるんですね」

「若いなんて年じゃないですよ。今年で42になります」

「え、30代半ばくらいかと思ってました!お若いですね!」

「いいえ、とんでもない。いやいや…」

 彼は俯き加減で顔の前で右手を振る。西島さん、照れてる。かわいい…。

 なるほど、彼くらいの年なら長がつく役職についていてもおかしくない。

「まあ、ということで、すっかり酔いが醒めてしまいました」

 彼は少し困ったように笑った。笑ったときの目に疲労感が見える。さっき居酒屋で飲んでいた彼の背中を思い出して悲しくなった。


「飲み直しましょうか?」


「え?」

「あ、いや、なんでもありません…」

 
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