どうにもこうにも~出会い編~
 意外だった。でも恋人はいるのかもしれない。いや、誰も咎める人はいないということは、本当にフリーということ?

「お恥ずかしい話です」

 西島さんは俯き加減で自嘲気味に笑った。

「そろそろ戻らないと大将に怒られてしまいますよ」

「あ、はい。じゃあ、あとで連絡しますね!」

名刺には「経営企画部長 西島 啓之(ニシジマ タカユキ)」という名前が印字されていた。この日初めて西島さんの下の名前を知った。



この日ほどバイトが終わるのが待ち遠しいと思った日はなかった。


< 36 / 104 >

この作品をシェア

pagetop