どうにもこうにも~出会い編~
「今日はいつもより早く上がらせてもらったんです。今日は会社お休みだったんですか?」

「午前中だけ仕事でした。午後は本を読んだり買い物に行ったりしてましたね」 

 そう言えば彼の私服を見たのは初めてだった。それでもワイシャツとベストにチノパンという格好ではあるが。

「西島さん、料理上手そうですね」

「まぁ一人暮らしが長いですから。それなりに作りますよ」

「恋人、とか、いないんですか?」

「もう5年はいないですね。さすがにこの年ですから、半ば諦めてますよ」

 彼は寂しげに笑った。

「もったいないと思うんですけどね。西島さんみたいな人が結婚していないなんて」

「はは、どうでしょうねぇ。あ、つまみもありますよ」

と言って袋から取り出したのはさきイカだった。

「いただきます」

「ああ、あんまり遅くなってはいけませんね。こんな中年男と公園でビールを飲んでるなんて彼氏に知られたら怒られるでしょう」

「え?彼氏なんていませんよ」

彼は目を見開いて一瞬硬直して慌てた口調で言った。

「それはそれは失礼しました」

 逆になんで彼氏がいると思ったのか。

< 46 / 104 >

この作品をシェア

pagetop