どうにもこうにも~出会い編~
******************************

 俺は携帯電話の通話終了ボタンを押し、顔を上げた。

今日は天気もよく暖かい。土曜日の昼だけあって、中高生、子連れの家族、若いカップルと、駅前は多くの人が行き交っている。俺と石原さんが並んで歩いているところを傍から見たら、どういう風に見えるのだろう。

コーヒーショップのガラスドアに映る自分の姿を下から上に眺め見る。カジュアルなレースアップシューズ、カーキ色のチノパン、カッターシャツとインディゴブルーのベスト、そしてくたびれた中年の顔…。

「親子、か…」

 まわりから見たら友達とも恋人ともつかないだろう。それが妥当だ。

 石原さんはとても慌ただしい口調で寝坊したと言っていた。学校やバイトで忙しくて疲れているのだろう。付き合わせてしまうようで悪いなと思いながら、噴水時計の前に腰を下ろした。

 自分でも浮足立っているのがわかる。ふと気がつくと何度も腕時計に目をやっている。彼女がどこから来るのかとあたりをキョロキョロと見回してはため息をついている。一体自分はどうしてしまったのだろう。若い頃に付き合っていた恋人とのデートのときみたいで、懐かしい気持ちになる。デートか…。

< 64 / 104 >

この作品をシェア

pagetop