どうにもこうにも~出会い編~
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 この胸のドキドキは、自転車で激走したドキドキなのか、男の人とデートをするというドキドキなのか、よくわからないけど、きっと自転車で激走したドキドキなのだと思う。ドキドキというかバクバクだ。せっかくキメた化粧も汗で落ちてしまう。

噴水時計の前で足を組んで座っている見覚えのある男性の姿が目に入った。西島さんだ。どこか遠くを見つめる背中は哀愁が漂っている。これが長年の経験が出せる背中なのか。

 私たちは会って間もなく歩き出した。事前に好きな食べ物は何か聞くだけでなく、アレルギーはないか確認するあたり、さすがである。パスタが食べたいという私の要望通り、西島さんに連れられてきたのは駅から徒歩5分ほどのカジュアルなイタリアンレストランだった。ドアを開けてエスコートするあたり、この人、慣れている。

 店内は木を基調とした温もりのある雰囲気で、静かなジャズが流れていた。既に混み始めていたけど、割と静かで落ち着いている。私たちは外の景色がよく見える窓側のテーブル席に座った。

「メニューをどうぞ」と言って西島さんは私にメニューを向けた。値段を見て思わず目を見張る。大学生の私にとっては少々お高い。

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