どうにもこうにも~出会い編~
「西島さんのような人がいまだに独身なのが信じられないんですけど」

「嬉しいこと言ってくれますね。仕事に突っ走っていたら、いつの間にかこんな年になっていました。もうこの年になると、ずっと一人でもいいのかなと思います」

「ええ、もったいない…」

 私はデザートのオレンジのジュレを口に運んだ。甘酸っぱいジュレが口いっぱいに広がる。西島さんは口元に笑みを浮かべながらコーヒーをすすっていた。

「あなたは本当に美味しそうに食べますよね」

「そうですか?」

 褒められてるのかな?

「あなたが食べているところを見ているのは好きですよ。どんどん食べさせてやりたくなります」
 好き、という言葉にドキっとする。食べている姿が好きというだけで、私のことが好きなわけではないことはよく分かっているけど、なんとなく意識してしまう。

「ちょっとお手洗い行ってきますね」

 
< 68 / 104 >

この作品をシェア

pagetop