どうにもこうにも~出会い編~
 2時間弱の映画だった。

「泣ける映画を人と一緒に見るのはだめですね。もう顔ボロボロで恥ずかしい」

「あんなに泣ける映画だとは思わなかったですねぇ。年を取ると涙もろくなって困りますね」

 映画館を出たあとも、彼はハンカチで目頭をおさえている。彼の意外な一面を見たような気がした。なんだかかわいいと思ってしまう。

 私たちはショッピングモールの一角にあるコーヒーショップに立ち寄り、一休みすることにした。映画を観たあとに、誰かと映画の感想を言い合うのは楽しい。彼は、映画鑑賞が好きなだけあって、主演ふたりの演技がどうとか、構図の取り方がどうとか、細かい分析をしてはしきりに称賛していた。

「それにしても、人を愛するということはすばらしいことですね」

「でもあの男の人、若い頃はずっと女遊びしてきてたじゃないですか。あの人のせいで傷ついた女の人たちがかわいいそう」

「そうですね。それに、まさかあの美大生の母親と彼が昔関係をもっていたことには驚きました。母親も彼に傷つけられたひとりの女性ですからね。もし私に娘がいたら、彼のような男とは一切会わせたくないですね」

「でもふたりはとっても愛し合ってましたよねー。それこそ昔の彼は最低でしたけど、ふたりの愛の形はステキだったかも。ねぇ、あのふたりみたいに、歳の差のある恋愛ってどう思いますか?」

「うーん…」

 彼は顎に手をあて思案した。

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