どうにもこうにも~出会い編~

思い出を置き去りにして

 月曜日の午前中。おそらく3限目は既に始まっている。私はトモちゃんと大学のある棟の、誰もいない教室にいた。3年生までに卒業単位は取っているので、4年生になってからは週1回のゼミしかない。就活中の私たちは、一緒にエントリーシートを書いていた。

「で、慧は追いかけなかったの?西島さんのこと」

「なんかすっごいショックで、頭はたらかなくなって、あのあと何も話せなかった。あとですっごい後悔したけど」

「かわいそうにねぇ。西島さんもお堅い人よね。自分がおじさんだからって好きなのに身を引いたってことでしょ。そのあと連絡は?」

「向こうからはきてない。こっちから連絡とる勇気もない」

「じゃあもう会わないんだ」

「もううちのバイト先には来ないって言ってたし、たぶん」

「慧はそれでいいの?」

「…」

 いいわけがない。本当は会いたくて会いたくてたまらない。でもこわい。自分から踏み出せない。もどかしい。

「まあ就活とか卒論で忙しいし、西島さんのことばっかり考えてられないよ。もういいんだ」

「ふーん」

 その後、彼は言っていた通り私のバイト先には一度も顔を出していないし、連絡もとっていない。もう彼のことは忘れよう。忘れなきゃいけない。就活と卒論で毎日が慌ただしく過ぎていく。私は将来を見据えなきゃいけない。


しっかりしなきゃ、自分。


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