どうにもこうにも~出会い編~
 一部の研究室の明かりがついているところを見るとそうらしい。廊下はひんやりとしていて気持ちいい。夜の静けさが感じられる。私たちが通ると薄暗い廊下の電気がついた。今歩いている階には誰もいないみたいだ。

「ここ、俺が使ってる研究室。使ってるのは俺だけじゃないけど」

 彼はその研究室の鍵を開けて電気をつけ、私を入れてくれた。中にはパソコンやたくさんの本だけでなく、冷蔵庫やソファなんかもあって、生活感が溢れている。

「ずっと気になってたんだけどさ」

 おもむろに三宅先輩は口を開いた。

「西島さんって人、もうずっと来てないよね、うちの店」

 久しぶりに聞いた彼の名前。記憶の彼方にしまいこんだつもりでも、毎日のように思い出される、彼と過ごしたわずかな日々。彼の声、匂い、仕草、表情が、今でも忘れられない。

「前さ、駅の近くで会った日、たまたま会ったなんてウソだよな」

 ドキっとした。

「あの人と、デートだったんじゃねーの?」

「……」

「好きなの?西島さんのこと」

「好き、でした。西島さんにも好きって言われたけど、今以上の関係にはなれないって言われたんです」

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