どうにもこうにも～出会い編～
「西島さん、私です。石原です」

　彼は私にゆっくり近づき、彼の右手が私の頬に触れようとした。その手の温度を感じそうになるくらい近づいたところで彼は手を下ろした。

「すいません。何やってるんだろう。びっくりして、つい。夢かと思いました」

　彼は我に返ったように、苦笑いを浮かべた。

「ずっと、ずっとずっと会いたかったです」

　言葉にならない感情が胸に押し寄せる。

「あんなことを言ってあなたのもとを去った手前、こんなことを言うのは躊躇われるのですが…。私も、あなたにずっと会いたかった」

　彼も、変わらない気持ちでいてくれたのだと思うと嬉しさが込み上げる。

「石原さんは、どうしてここに？」

「今日、内定式だったんです。その帰りです」

「そうだったんですか。就職決まったんですね。おめでとうございます」

　久しぶりに会ったせいか、なんだかぎこちない空気で、お互いによそよそしい。少しの間の沈黙。もっといろいろ話したいはずなのに、言葉が口から出てきてくれない。

「石原さんの内定祝をしてもいいでしょうか？」

「え？」

「あのときの罪滅ぼしじゃないですけど、またご飯くらい奢らせてくれませんか」

「えと、ぜひ、お願いします」

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