とある企業の恋愛事情 -ある社長秘書とコンビニ店員の場合-
社長秘書はあやめちゃんと結婚します!
「綾芽さん、結婚式はどうする?」
二人でデートに出掛けた昼下がり、俊介は休憩に入ったカフェでさりげなく自然を装って綾芽に尋ねた。目的は勿論、綾芽と結婚式をすることである。
綾芽との婚姻届は書いたが、まだ提出していない。そして、結婚式の予定も未定だ。この状態では二進も三進もいかないだろうと、前に進むために綾芽に尋ねた。
「あ、いえ……私は特に希望は……」
ない。俊介はこの答えをある程度予想していた。だが、綾芽も女性だ。花が好きなようだし、結婚式に夢を抱いていると思っていた。
「じゃあ、二人でブライダルフェアとか行ってみるか? よさそうな式場があったらそこに聞いてみて────」
「いえ、結婚式は……あんまり派手じゃなくて。普通がいいです」
「普通?」
「私は呼べる親族もいませんし、友達も多い方じゃありません。だから、大きな式場にしても俊介さんに恥をかかせるかなって。それに────」
「それに?」
「結婚式って、お金かかるじゃないですか。申し訳ないんですが、私そんなに貯金があるわけじゃなくて……。だから、希望は言いません。別に式をしなくてもいいんです」
そんなの俺がいいわけあるか! と叫びたいところだが、俊介はぐっと我慢した。
綾芽の気持ちはよくわかる。結婚式がいくらするかはおおよそでしか知らないが、安くはない。特に、綾芽の金銭感覚からすれば大概の結婚式は贅沢を極めていると思われても仕方ない。
俊介は以前ネットで結婚式の予算を調べたことがあった。安ければ五十万以下でもできるが、高い式場を使えば五百万はかかる。綾芽の借金の額と同じだ。そんな式場を選んだ日には、また綾芽に別れを告げられかねない。
「でも、一生に一回なんだ。俺だって綾芽さんの花嫁姿は見たい。お金のことは気にしなくてもいいから、見るだけ見てみないか?」
なぜ、花婿の方から頼んでいるのだろう。普通、花嫁の方から頼むのが一般的ではないだろうか。だが、俊介は一歩も引くつもりはなかった。綾芽の花嫁姿が見れるか見れないかの瀬戸際なのだ。これで見れなかった日には一生後悔することになるだろう。
綾芽は悩んだようだが、分かりましたと頷いた。
「じゃあ、やるかどうかはともかくとして、参考に見てみます。私も結婚式のことは裏方しか知らないので」
「裏方?」
「式場でバイトしたことがあるんです」
「ああ……」
なら、余程自分より詳しいのではないだろうか。彼女より研究していかないと口で言い負かされてしまいそうだ。
綾芽はなかなか一筋縄ではいかない女性だ。十五歳も年下なのに口で自分を言い負かすなんてかなりのやり手だ。
俊介はコーヒーを口に運びながら、どうすれば綾芽が納得するか必死で考えたが、いい案は浮かばなかった。
二人でデートに出掛けた昼下がり、俊介は休憩に入ったカフェでさりげなく自然を装って綾芽に尋ねた。目的は勿論、綾芽と結婚式をすることである。
綾芽との婚姻届は書いたが、まだ提出していない。そして、結婚式の予定も未定だ。この状態では二進も三進もいかないだろうと、前に進むために綾芽に尋ねた。
「あ、いえ……私は特に希望は……」
ない。俊介はこの答えをある程度予想していた。だが、綾芽も女性だ。花が好きなようだし、結婚式に夢を抱いていると思っていた。
「じゃあ、二人でブライダルフェアとか行ってみるか? よさそうな式場があったらそこに聞いてみて────」
「いえ、結婚式は……あんまり派手じゃなくて。普通がいいです」
「普通?」
「私は呼べる親族もいませんし、友達も多い方じゃありません。だから、大きな式場にしても俊介さんに恥をかかせるかなって。それに────」
「それに?」
「結婚式って、お金かかるじゃないですか。申し訳ないんですが、私そんなに貯金があるわけじゃなくて……。だから、希望は言いません。別に式をしなくてもいいんです」
そんなの俺がいいわけあるか! と叫びたいところだが、俊介はぐっと我慢した。
綾芽の気持ちはよくわかる。結婚式がいくらするかはおおよそでしか知らないが、安くはない。特に、綾芽の金銭感覚からすれば大概の結婚式は贅沢を極めていると思われても仕方ない。
俊介は以前ネットで結婚式の予算を調べたことがあった。安ければ五十万以下でもできるが、高い式場を使えば五百万はかかる。綾芽の借金の額と同じだ。そんな式場を選んだ日には、また綾芽に別れを告げられかねない。
「でも、一生に一回なんだ。俺だって綾芽さんの花嫁姿は見たい。お金のことは気にしなくてもいいから、見るだけ見てみないか?」
なぜ、花婿の方から頼んでいるのだろう。普通、花嫁の方から頼むのが一般的ではないだろうか。だが、俊介は一歩も引くつもりはなかった。綾芽の花嫁姿が見れるか見れないかの瀬戸際なのだ。これで見れなかった日には一生後悔することになるだろう。
綾芽は悩んだようだが、分かりましたと頷いた。
「じゃあ、やるかどうかはともかくとして、参考に見てみます。私も結婚式のことは裏方しか知らないので」
「裏方?」
「式場でバイトしたことがあるんです」
「ああ……」
なら、余程自分より詳しいのではないだろうか。彼女より研究していかないと口で言い負かされてしまいそうだ。
綾芽はなかなか一筋縄ではいかない女性だ。十五歳も年下なのに口で自分を言い負かすなんてかなりのやり手だ。
俊介はコーヒーを口に運びながら、どうすれば綾芽が納得するか必死で考えたが、いい案は浮かばなかった。