とある企業の恋愛事情 -ある社長秘書とコンビニ店員の場合-
この日、取引先と打ち合わせがあるため夕方から出掛ける予定だった。
聖と共に一階に降りた俊介は、打ち合わせの内容を口頭で伝えながらエントランスに向かって歩いていた。
「今回の企画は二年後オープン予定のインペリアルホールで複数イベントを実施して、認知度のアップと見込み客の集客を────」
ソラで覚えている打ち合わせの内容をやや早口めに伝える。その時だった。
ふと、視界の隅に人影が映った。トートバッグを持って足早にエントランスから出ていく人物には見覚えがある。
少しして、その人物がコンビニの店員の立花であることに気が付いた。
あんなに急いでどこへいくのだろうか。私服を着ているからもう仕事上がりなのだろう。
彼女はTシャツにジーンズと、シンプルな格好をしていた。近所に出ていくような格好だが、彼女が着ると大量生産の服でもそれらしいブランドものに見える。
「俊介?」
名前を呼ばれて我にかえる。聖は不思議そうな顔をして俊介の顔を覗き込んでいた。
「どうしたの? ぼうっとして」
「ああ、悪い。ちょっとな」
「もしかして、具合が悪いの?」
「そんなんじゃない。知った顔がいたから、ちょっと見てただけだ」
「俊介がぼうっとするなんて珍しいわね」
そうかもしれない。こんなに注意力散漫なのは珍しいことだ。
コンビニに通う内にあの店員の顔をすっかり覚えたからだろうか。いつもの彼女がもっと落ち着いていてクールに見えるから、やけに慌てていた様子が目立って映ったのかもしれない。
気を取り直し、俊介は打ち合わせの内容を続きから喋った。エントランスを抜ける頃には、あの店員はもういなくなっていた。
聖と共に一階に降りた俊介は、打ち合わせの内容を口頭で伝えながらエントランスに向かって歩いていた。
「今回の企画は二年後オープン予定のインペリアルホールで複数イベントを実施して、認知度のアップと見込み客の集客を────」
ソラで覚えている打ち合わせの内容をやや早口めに伝える。その時だった。
ふと、視界の隅に人影が映った。トートバッグを持って足早にエントランスから出ていく人物には見覚えがある。
少しして、その人物がコンビニの店員の立花であることに気が付いた。
あんなに急いでどこへいくのだろうか。私服を着ているからもう仕事上がりなのだろう。
彼女はTシャツにジーンズと、シンプルな格好をしていた。近所に出ていくような格好だが、彼女が着ると大量生産の服でもそれらしいブランドものに見える。
「俊介?」
名前を呼ばれて我にかえる。聖は不思議そうな顔をして俊介の顔を覗き込んでいた。
「どうしたの? ぼうっとして」
「ああ、悪い。ちょっとな」
「もしかして、具合が悪いの?」
「そんなんじゃない。知った顔がいたから、ちょっと見てただけだ」
「俊介がぼうっとするなんて珍しいわね」
そうかもしれない。こんなに注意力散漫なのは珍しいことだ。
コンビニに通う内にあの店員の顔をすっかり覚えたからだろうか。いつもの彼女がもっと落ち着いていてクールに見えるから、やけに慌てていた様子が目立って映ったのかもしれない。
気を取り直し、俊介は打ち合わせの内容を続きから喋った。エントランスを抜ける頃には、あの店員はもういなくなっていた。