とある企業の恋愛事情 -ある社長秘書とコンビニ店員の場合-
 酒を飲むことがほとんどないからだろうか、綾芽は家に帰るとすぐに眠ってしまった。

 元々、寝つきはかなりいい方だが、滅多に飲まない酒を飲んで体も疲れたのかもしれない。

 次の日出勤すると、萩原もいた。萩原は綾芽より酒を飲んでいたしかなり酔っていたふうだったが、やはりかなり眠そうだ。

「萩原君、昨日はありがとう。ちゃんと家に帰れた?」

「ああ……なんとか……途中電車で寝そうになりました」

「もしかして、お酒に弱いの?」

「うーん、弱くはないんですけど、雰囲気酔いですかね」

「可愛い女の子、いてよかったね」

「いやーあの時はノリで聞いちゃっただけなんで、好みの子かどうか……」

「やっはり酔ってたんじゃない」

 午前中の仕事を終わらせて休憩に行くと、スマホにメッセージが入っていた。画面に表示された「青葉さん」の文字を見て、綾芽は一気にテンションが上がった。

 慌てて画面を開いてメッセージを確認する。内容は、今週の夜どこか時間はないか、と短く簡潔なものだった。綾芽はある、と返そうと思ったが一瞬画面を押す手が止まった。

 先日青葉は夕飯を食べに行かないかと誘ってきた。そのことだろうか。だが、だとしたら受付嬢の彼女はなんなのだろう。青葉が遊び人だなどとは思わないが、そのことが妙に引っかかった。

 ────聞けば、答えてくれるだろうか。

 綾芽は行けそうな曜日を返事した。青葉からの返事はすぐに帰ってきた。

『その日にしよう。店はこの間言ったところに連れて行こうと思うけど、他に希望はあるか?』

 正直、青葉と出かけられるのなら場所なんてどこだって構わない。だが、青葉は勝手に決めるのはよくないと思っているのだろう。綾芽はそこにしましょうと返事した。

 青葉は今日は上の階にいるのだろうか。だとしたらまたロビーを通るだろう。約束したばかりにも関わらず綾芽は憂鬱だった。受付が一階になければいいのにと思った。
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