とある企業の恋愛事情 -ある社長秘書とコンビニ店員の場合-
十二月に入ると、綾芽は仕事がより忙しくなった。十二月は書き入れ時だ。クリスマスに正月もあるから、フリーターの綾芽にとっては一年で最も忙しい月かもしれない。
花屋でももう一つのバイトでも、掛け持ちで仕事している綾芽にとっては非常に大事な月だ。忙しさに比例して給料も高くなるから、いつも以上にバイトを入れていた。
だが、そのおかげで俊介と会う時間はほとんどないに等しかった。
この日、綾芽は花屋のバイトを終えた後久しぶりに買い物に出かけた。
クリスマスに結婚式を行う聖と本堂への結婚祝いを買うためだ。気を使わなくていいと言われたが、そうはいかない。衣装もいろいろ貸してもらっているのに手ぶらで参加するわけにはいかなかった。
事前に俊介からアドバイスをもらい、聖の好みはなんとなく把握していた。「できるだけ庶民的なものにしてやってくれ」ということだったので、綾芽としては助かった。
聖は超がつく金持ちだ。そんな彼女が大勢からもらう結婚祝いは想像もつかないが、もしかしたら一枚ウン万円もする皿や有名店の菓子、人間国宝が作った箸でももらうのかもしれない。
しかし、聖は金持ちだが意外と庶民的なものを好んでいる。食べ物はB級グルメが好きだし、あまり高級なものを食べているところは見たことがないし聞いたこともない。
とにかくいろいろ見て回ろうと、綾芽は店を見て回ることにした。
小一時間ほど歩き、何軒目家の店でようやく二人のプレゼントを購入した。紙袋をぶら下げ、綾芽は再び街を歩いた。
空はすでに暗いが、街中はイルミネーションが点灯しているためそれほど暗く感じない。どこもかしこも赤や緑、金色で彩られていてクリスマス一色だ。
手を繋いだカップルや家族連れが歩き、プレゼントを探しているのだろうか。楽しそうに店のショーウィンドウを眺めていた。
────クリスマス、かぁ。
綾芽はその光景を眺めながら、なんだか温かい気持ちになった。
以前はクリスマスの時期にこうして出歩くことはほとんどなかった。クリスマスの時期はいつもバイトが忙しく、他のことなど気にする余裕もなかった。
それ以前も、特別楽しい日ではなかった。
両親が健在だった頃も、ケーキやプレゼントはあったが、押し付けがましいそれが自分は好きではなかった。
両親がいなくなってからは祝えるような余裕もなくなった。多額の借金を抱えることになった自分にはプレゼントもケーキも用がないものだ。恋人も家族もいない。
そんな中で、クリスマスはただ単に「いつもより稼げる日」でしかなかった。
だが、今年は違う。俊介がいるのだ。
生憎、十二月は仕事の都合で俊介と一緒にいられる時間はほとんどないが、結婚式は休みがもらえたため、式が終わった後二人で食事をする予定だ。
「そうだ、俊介さんにもプレゼントを買わないと」
唐突にプレゼントのことを思い出した。長らく人にプレゼントをすることがなかったため忘れていたようだ。
綾芽は歩く方向を変え、少しウキウキした気分で店に入った。
花屋でももう一つのバイトでも、掛け持ちで仕事している綾芽にとっては非常に大事な月だ。忙しさに比例して給料も高くなるから、いつも以上にバイトを入れていた。
だが、そのおかげで俊介と会う時間はほとんどないに等しかった。
この日、綾芽は花屋のバイトを終えた後久しぶりに買い物に出かけた。
クリスマスに結婚式を行う聖と本堂への結婚祝いを買うためだ。気を使わなくていいと言われたが、そうはいかない。衣装もいろいろ貸してもらっているのに手ぶらで参加するわけにはいかなかった。
事前に俊介からアドバイスをもらい、聖の好みはなんとなく把握していた。「できるだけ庶民的なものにしてやってくれ」ということだったので、綾芽としては助かった。
聖は超がつく金持ちだ。そんな彼女が大勢からもらう結婚祝いは想像もつかないが、もしかしたら一枚ウン万円もする皿や有名店の菓子、人間国宝が作った箸でももらうのかもしれない。
しかし、聖は金持ちだが意外と庶民的なものを好んでいる。食べ物はB級グルメが好きだし、あまり高級なものを食べているところは見たことがないし聞いたこともない。
とにかくいろいろ見て回ろうと、綾芽は店を見て回ることにした。
小一時間ほど歩き、何軒目家の店でようやく二人のプレゼントを購入した。紙袋をぶら下げ、綾芽は再び街を歩いた。
空はすでに暗いが、街中はイルミネーションが点灯しているためそれほど暗く感じない。どこもかしこも赤や緑、金色で彩られていてクリスマス一色だ。
手を繋いだカップルや家族連れが歩き、プレゼントを探しているのだろうか。楽しそうに店のショーウィンドウを眺めていた。
────クリスマス、かぁ。
綾芽はその光景を眺めながら、なんだか温かい気持ちになった。
以前はクリスマスの時期にこうして出歩くことはほとんどなかった。クリスマスの時期はいつもバイトが忙しく、他のことなど気にする余裕もなかった。
それ以前も、特別楽しい日ではなかった。
両親が健在だった頃も、ケーキやプレゼントはあったが、押し付けがましいそれが自分は好きではなかった。
両親がいなくなってからは祝えるような余裕もなくなった。多額の借金を抱えることになった自分にはプレゼントもケーキも用がないものだ。恋人も家族もいない。
そんな中で、クリスマスはただ単に「いつもより稼げる日」でしかなかった。
だが、今年は違う。俊介がいるのだ。
生憎、十二月は仕事の都合で俊介と一緒にいられる時間はほとんどないが、結婚式は休みがもらえたため、式が終わった後二人で食事をする予定だ。
「そうだ、俊介さんにもプレゼントを買わないと」
唐突にプレゼントのことを思い出した。長らく人にプレゼントをすることがなかったため忘れていたようだ。
綾芽は歩く方向を変え、少しウキウキした気分で店に入った。