若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 写真に視線を落とした瞬間、私は目を見張った。
 
 写っていたのは、着物姿の若い男性だった。どこか中性的な顔立ちで、すべてのパーツが完璧に整っている。本人に了承を得ないで撮っているのか、カメラの方は見ておらず、にこりとも笑っていない冷たい表情だが、その姿に私の胸が高鳴った。

「背が高くて、クールな人ね」

 彼の周りにも人がいるが、霞んで見えるほどだ。

「クールとはなんだね?」

「あ、かっこいいって意味。彼はグッドルッキングガイね」

 濃いブルーの着物を着こなす堂々とした立ち姿や、喉仏から胸元にかけてのラインは色気と男らしさを感じさせる。

「気に入ったかね?」

「こんなに素敵な人なら、結婚相手なんてゴロゴロいるんじゃないのかしら?」

「そうだろうな。彼は現在三十二歳。江戸時代から続く日本橋にある呉服問屋の若旦那だ」

 若旦那がどういうものなのかわからなかったが、そこへ注文していたステーキが運ばれてきて、そちらに注意が向いたので、父に尋ねるのをやめる。
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