若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜

「私が着付けますから覚えてくださいね。お洋服を脱いで肌襦袢を着てください。あと、先に足袋も」

　翠子さんは私に背を向ける。

　しゃがんで足袋を穿いてから、カットソーやジーンズを脱ぎ、先日振袖を着付けられたときのことを思い出しながら肌襦袢を着る。

「ウエストが細いんですよ。これを使いなさい。それから髪の毛が邪魔ね。翠子さん、髪留めはあるかしら？」

「はい。すぐに」

　翠子さんは自分のデスクへ行き、黒ゴムを持って戻ってくる。私はざっと頭のてっぺんで結んで、髪をくるくる巻きつけた。

「手先は器用なのかしら？」

　おばあさまにほんの少しだけ感心してもらえてホッとする。

「若奥さま、こちらをウエストに」

　翠子さんが渡してくれた補整ベルトを巻いてから、長襦袢を身につけた。

　そこでおばあさまが私の前に立ち、じろりと眺める。

「ここが緩んでいますよ」

　おばあさまが手を伸ばし、私の胸元から腰にかけてビシッと長襦袢を正す。