若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「これは伊達締めよ」
幅のある帯のようなものを私のウエストに巻きつけて結び、それからピンク色の着物を渡される。
「綺麗なピンク色」
息が詰まりそうで言葉にした直後――。
「ピンク色ではありません。桃花色と言うのです。日本には古くから美しい和名が色につけられています。澪緒さんは色の呼び名を覚えなくてはなりませんね」
「はい。申し訳ありません」
色にそんな和名があるとは……。
「まったく、そんなことも知らないなんて」
「大奥さま、もうすぐ来客の時間になります」
翠子さんがおばあさまに知らせると、思い出したように草履に足を入れる。
「あとは頼みますね。翠子さん」
「かしこまりました」
上品に微笑みを浮かべた翠子さんはドアのところまで見送って戻ってきた。
「若奥さま、大奥さまのお言葉は気になさらないでくださいね」
「叱られるのも無理はないですから。勉強します」
「自宅に色見本の本があるのでお持ちしますね。では羽織ってください」
私は桃花色の着物に袖を通す。
幅のある帯のようなものを私のウエストに巻きつけて結び、それからピンク色の着物を渡される。
「綺麗なピンク色」
息が詰まりそうで言葉にした直後――。
「ピンク色ではありません。桃花色と言うのです。日本には古くから美しい和名が色につけられています。澪緒さんは色の呼び名を覚えなくてはなりませんね」
「はい。申し訳ありません」
色にそんな和名があるとは……。
「まったく、そんなことも知らないなんて」
「大奥さま、もうすぐ来客の時間になります」
翠子さんがおばあさまに知らせると、思い出したように草履に足を入れる。
「あとは頼みますね。翠子さん」
「かしこまりました」
上品に微笑みを浮かべた翠子さんはドアのところまで見送って戻ってきた。
「若奥さま、大奥さまのお言葉は気になさらないでくださいね」
「叱られるのも無理はないですから。勉強します」
「自宅に色見本の本があるのでお持ちしますね。では羽織ってください」
私は桃花色の着物に袖を通す。