若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「着物にもシーンによって種類があります」

「あ、昨日の本に載っていました。これは……小紋ですね?」

「そうです。お勉強されているのですね。まずは私が手本を見せますので、手順を覚えてくださいね。もちろん一度でとは言いません」

 翠子さんは説明をしながら着付けてくれる。

「帯は振袖のような豪華な結びではなく、簡単なんですよ」

 ベージュの縞模様の入った帯を結ぶのは意外と力がいるのかと思ったけれど、翠子さんはクリップを使い、さっさと仕上げていく。

 たしか、おばあさまから渡された本に着付けの要点があったよね。帰ったら練習しよう。

 今までの自分の生活にはなかったことを知ることができるのは楽しいと思った。

「帯は仕事の邪魔にならないように二重太鼓にしています。これでできあがりです」

「ありがとうございます」

 等身大のスタンドミラーの前で回って、二重太鼓結びという帯の形を見て納得した。

 振袖を着たときのような大きい形では動きづらい。これなら背もたれのある椅子に座っても邪魔にならなそうだ。

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