若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「購入したものはここにある」

 彩人さんは洋服ダンスのひとつを開けた。そこにずらりとワンピースやスーツが掛けられていた。

「あ……」

 デパートで買ってもらったことをすっかり忘れていた。

「絢斗さん、ありがとうございました」

「おばあさまの血圧を上げないためだ。夕食は着物のままで。行こう」

 彼は無表情で衣裳部屋から出ていく。

 一階の洗面所で手を洗い、ダイニングルームへ行くとふたり分のカトラリーが用意されていた。

「おばあさまは……?」

 椅子に腰を下ろしながら、先に席に着いた絢斗さんに尋ねる。

「おばあさまの夕食の時間はまちまちで、今日はお腹が空いていたようだ」

 そう言われても、私と顔を合わせたくないのかもと思ってしまう。

「食べよう」

 テーブルには食べきれないほどの料理が並んでいる。

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