若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「いただきます」

 両手を合わせて「いただきます」とお箸を持つ。

 豚肉の生姜焼きや煮物、お刺身と、おかずのバリエーションが多い。
 
 お昼はチーズバーガーとポテトフライだけだったので、お腹は空いているものの、着物だと入っていかない。
 
 なんとか食べ終えて、「ごちそうさまでした」と立ち上がる。

「澪緒、その着付け、点数をつけると二十点だ」

「え?」

 自分を見下ろして、少し緩んでいるもののこれがそんな点数なの?と目を剥く。

「どこがダメなんですか?」

 絢斗さんは食後に出されたお茶をひと口飲んで、静かに私へ視線を向ける。

「襟、合わせ、帯、帯どめ、丈、挙げればキリがない」

「はい、はい。完璧に着られるよう精進します」

 ふてくされ気味でため息をつく。

 すると、絢斗さんから笑いを押し殺した声が聞こえる。

「時々、知りそうもない日本語を使うんだな」

「ママが使った言葉はだいたい覚えていますから」

「頑張って精進してくれ。先に風呂に入るといい」

「はいっ」

 疲れた体をお風呂でほぐしたい。

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