若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 私はキッチンにいる芳子さんに「ごちそうさまでした」と告げて、二階の部屋へと向かう。
 
 しかしドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたものに驚いて、思わずバタンとドアを閉める。

「ええっ? ここは私の部屋だよね?」

 閉めたドアを前に、きょろきょろと辺りを見回す。

「間違いないわ。私の部屋よ」

 ドアを再度開けて入室し、驚いたものに近づく。部屋の壁際に置かれていたのはベッドだった。

 まさか用意してくれるとは思っていなかったから、めちゃくちゃ嬉しい。

 セミダブル仕様で、この畳の部屋に似つかわしくない、お姫さまみたいな白いベッドだった。

 絢斗さんを捜しに隣のリビングへ行くが、まだ下から戻っていない。

 階下へ向かおうとしたとき、絢斗さんが入ってきた。

「絢斗さんっ!」

 駆け寄っていつも友人にやるように彼に抱きつく。

「ベッドありがとう! すっごく嬉しい!」

 抱きついた絢斗さんから「クックッ」と、喉の奥から笑う声が聞こえた。

「そんなに喜んでもらえるとはな。服や指輪よりもな」

 絢斗さんから離れて顔を見上げると、途端に抱きついた行動が恥ずかしくなる。

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