若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「ベッドは思いがけなくて。色々ありがとうございました」

 なんだか頬が熱い。

 そんな自分を気にしないようにしてペコッと頭を下げる。

「そうだ。婚約指輪を渡しておこう」

 彼はリビングのテーブルに置かれたショッパーバッグを取ろうとした。

「あの、リングは預かっておいてください」

「俺が預かる?」

 振り返った彼は不思議そうな顔つきだ。

「はい。今日着物を着たり、反物を巻いたりしてみて、リングが引っかかる気がしたんです。知っての通り下手なので」

「たしかに下手だな。わかった。それなら部屋に置いておけばいいんじゃないか?」

「それはそれで心配なので。そのリングはものすごく高いんですから。ではお風呂に行ってきます」

 先ほど抱きついたせいなのか、心臓がドキドキしていて、そのことを忘れようと大きく頭を左右に振って、リビングを離れた。
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