若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 今朝は絢斗さんが買ってくれた着心地のいいワンピースで朝食の席に着いたら、おばあさまはちらりと私を見ただけでなにも言わなかった。孫の嫁が気に入らないからといって、あら探しをしてまで文句を言う人ではなさそうだ。

「ふぅ~」

 ほうきを持つ手が痛んだ。昨晩寝る前に反巻きと着付けの練習を一時間ずつしたせいだ。寝たのは一時を過ぎていた。ベッドは快適だったけど、まだ眠くてあくびが出てきそうだ。

 店の前を掃き終え、次は窓拭きだ。

 店舗の外壁はブラウンの木材がメインで、窓はディスプレイ用のスペースだけなので、それほど大変そうではない。

 窓ふき用の洗剤の入ったスプレーボトルを持ちながら拭き始めた。


 三十分後、掃除を終わらせて店内に戻り手を洗っていると、島谷さんに声をかけられる。

「若奥さま、着物に着替えましょう」

 島谷さんが、畳のスペースに案内してくれ、可動式扉を閉める。

 彼女たちは手際よく着物を身につけていく。

 私も練習した通りに袖を通す。
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