若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜

「ファストフード店かと思ったわ」

「まさか」

　絢斗さんは椅子の背に体を預けて口元を緩ませる。

　彼は、上質な濃い緑色のニットとビンテージもののジーンズに着替えていた。着物姿も素敵だけど、そんなカジュアルな服装は彼のモデル張りのスタイルのよさを際立てている。

　モテるはずなのに……。

　あんな形で結婚相手を見つける人じゃないと改めて疑念が浮かぶ。

　過去になにかあったとか……？

「なににする？　ここは分厚いパテが名物なんだ」

　彼にメニュー表を見せられ、ハッとなる。

「美味しそうだわ。どれにしよう……」

　メニューはかなりの種類があり迷う。

　周りのお客さんを見れば、皆、大きな口を開けてハンバーガーにかぶりついている。

　メニューに視線を戻してすぐ、カリフォルニア・バーガーの写真が目に入った。

「これに」

「美味しそうだな。俺もそれにしよう」

　絢斗さんが軽く手を挙げると、若い女の子の店員が即座にやってくる。店が空いているせいもあるけど、彼の人を引きつけるオーラもあるのだろう。