若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 オーダーを済ませてから十分ほどでハンバーガーが運ばれてきた。飲み物やポテトフライ、グリーンサラダもついている。ファストフード店よりも満足度が高そうだ。

「いただきます」

 私は両手でハンバーガーを持ち、できる限り大きく口を開いてパクッと食べる。

 アボカドとチーズ、分厚いパテが口の中に入り、ゆっくり咀嚼する。素材はもちろん、ピリッと辛いソースも美味しくて、頻繁に通いたいと思うほどだ。

「翠子さんはここを知ってる?」

「さあ?」

 絢斗さんは私の質問に首を傾げる。

 今度ここに案内しよう。

「翠子とはうまくいってるのか?」

「はい。翠子さんは優しくて素敵な人ですね。翠子さんを妻にしたらいいのではないかと思うんですけど」

「彼女は妹みたいな感覚だ。妹とはセックスできないだろう?」

 炭酸のドリンクを飲んでいた私は噴き出しそうになり、こらえた拍子に気管に入って咳き込む。

「ゴホゴホッ……」

「大丈夫か?」

 テーブルの隅に置かれた紙ナプキンを私に渡しながらも、絢斗さんの顔は楽しそうだ。
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