若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「ふ~ん。なんだか逃げたそうな感じだな」

「ええっ? そんなことは思っていない。働くのは全然かまわないし」

「それなら俺が原因? 男を信じられないと言っていたよな?」

「う……ん」

 私は母が恋人に騙され全財産を失ったことをかいつまんで話した。

「……だから、男の人は信じられないけど……、絢斗さんは私の中でちょっと違う存在になっている。少なくともあなたはお金の面で私を騙していない。それどころかあり得ないほどの大金を使ってくれているから。ベッドも用意してくれたし」

「苦労したんだな。俺はできる限り正直でありたいと思っている。もちろん人を騙すようなことはしない」

「ん……」

 母の話をしたことで、当時の大変さを思い出して気持ちが重苦しくなってしまった。

「身上書には土産物店で働いていたとあったが、カリフォルニアの有名な大学を卒業しているよな?」

 私、偽っていると疑われている?

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