若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 今日はシャンプーの雑誌コマーシャルの撮影だ。十時からだから夕方には終わるだろう。

 キッチンへ行き、朝食の支度を始める。

 スライスしたパンにチーズをのせてオーブンに入れたら、冷蔵庫からアイスコーヒーと牛乳を出して、マグカップに半分ずつ入れてアイスカフェオレを作る。朝食はいつもこんな感じだ。

 パンが焼けた美味しそうな匂いがキッチンに漂い始める。

 オーブンから取り出したパンをお皿にのせて、キッチンのテーブルに着く。

「いただきます」

 大きな口を開けてパクッとチーズトーストを食べようとしたとき、ジーンズのお尻のポケットに収められたスマホが着信を知らせた。

 パンを口に入れるのをやめて、スマホを取り出してみると、モデルエージェントからだった。

「はーい。ミオです」

《レベッカよ。ミオ、悪いけど今日の撮影はモデルが変更になったの》

 エージェントのスタッフのレベッカは、抑揚のない声で私に告げる。

「モデルが変更?」

《ええ。スポンサーが急遽ブロンドに代えろって。そういうことだから。忙しいから切るわね。また連絡するわ》

 レベッカはそれだけ言って電話を切った。
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