若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
一方、御子柴屋の店舗は現代のニーズに伴い、シンプルでいて老舗の趣を持ち合わせた佇まいだ。
店内には見やすさと美しさを重視した棚を設置し、職人が一枚一枚手掛けた加賀友禅や京友禅の反物を掛けている。
中央にあるのは、一枚板の低い八人掛けテーブル。御子柴屋で代々引き継がれている屋久杉のテーブルだ。現在では屋久杉の伐採は禁止されているため、これほどのものは手に入らないと言われている。
テーブルの奥には一段高い十二畳のフロアがある。そこは壁一面が鏡張りで、普段はオープンにしているが、試着などの際には引き戸を閉めれば個室にもなる。
その両端には階段があり、二階にある展示場や事務所へ行ける。
俺は、先ほど寿葉さんがいた八畳の商談ルームに戻り、黒檀の大きなテーブルに広げた反物を、手でくるくると巻き取っていく。
そこへ枯茶色の着物に身を包んだ小(こ)坂(さか)直(なお)治(じ)常務が通りかかり、足を止める。
「社長、申し訳ありません。それは他の者に片づけさせます」
六十代前半の彼は、株式会社御子柴屋の常務取締役で、祖母に次いで古参だ。
店内には見やすさと美しさを重視した棚を設置し、職人が一枚一枚手掛けた加賀友禅や京友禅の反物を掛けている。
中央にあるのは、一枚板の低い八人掛けテーブル。御子柴屋で代々引き継がれている屋久杉のテーブルだ。現在では屋久杉の伐採は禁止されているため、これほどのものは手に入らないと言われている。
テーブルの奥には一段高い十二畳のフロアがある。そこは壁一面が鏡張りで、普段はオープンにしているが、試着などの際には引き戸を閉めれば個室にもなる。
その両端には階段があり、二階にある展示場や事務所へ行ける。
俺は、先ほど寿葉さんがいた八畳の商談ルームに戻り、黒檀の大きなテーブルに広げた反物を、手でくるくると巻き取っていく。
そこへ枯茶色の着物に身を包んだ小(こ)坂(さか)直(なお)治(じ)常務が通りかかり、足を止める。
「社長、申し訳ありません。それは他の者に片づけさせます」
六十代前半の彼は、株式会社御子柴屋の常務取締役で、祖母に次いで古参だ。