若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「銀座界隈を嫌がったと、壮二が嘆いていたよ。若旦那のツテで綺麗なホステスと遊びたかったようだ」

「そう思っていたのは壮二だけだろう?」

 新婚の朝陽がその気になるとは思えない。

「ああ。他の女なんて目に入らない」

「言ってくれるな」

 結婚するまでは女のことに関してのろけたこともないのに、結婚して変わった朝陽にクッと笑う。

「愛する女性がいれば、他の女と遊びたいなんて絶対に思わないさ」

「いいよな。それだけ気持ちを奪われる女がいるって」

 断言する朝陽を羨ましく思ったとき、男性が近づいてきた。

「朝陽は初恋を実らせたからな」

 突然、俺たちの会話に加わったのは、もちろん壮二だ。俺と同じくフルオーダーのスーツを身にまとい、歩きながらジャケットを脱いでいる。

 そこへすかさずクラブスタッフが近づき、ジャケットを渡した壮二は朝陽の隣に座った。

「おっ、機長かっこいいな」

 ニヤニヤ顔をさらに緩ませ、朝陽を茶化す壮二だ。

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