若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜

　夕刻、成田国際空港に到着し、入国審査、税関を過ぎてロビーへ出ると、父が待ってくれていた。

「疲れただろう。飛行機は揺れなかったか？」

「迎えに来てくれてありがとう。快適だったわ」

「それはよかった。では、都内のホテルへ向かおう」

　私が引いていたキャリーケースを父は引き取り、駐車場に停めた車へと案内してくれる。

　外へ出て、ロスよりも気温が低く寒さを感じた。トレーナーとジーンズなので震えるほどではないが、首元がスーッとしてひとつに結んでいた髪をほどく。

　父は黒い高級ドイツ車へ歩を進め、トランクへキャリーケースを入れて、私を助手席に座らせる。

「ちょうど混む時間帯だから、もしかしたら三時間くらいかかるかもしれない。お腹が空いているようなら、途中で食べてもいいが」

「お腹は大丈夫。機内食を食べてそんなに経っていないから」

　父が運転する車は空港の駐車場を出る。

「そうか。眠かったら寝てていいからな」

「はい」

　そう答える私だけど、初めて見る日本の景色がめずらしくて車窓から田園風景を眺める。