若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「チェックインは済んだよ。食事をしようか。このホテルには有名店がたくさん入っているんだ」

「パパ、今日はいいです。お腹は空いていないので。もう遅いし、帰ってください。迎えに来てくれてありがとう」

 父からカードキーを受け取って、にっこり笑い頭を下げる。

「腹は減っていない? しっかり食べないとダメだぞ」

「うん。なにか食べたくなったら、軽食をルームサービスします。パパ、早く帰って。奥さんが待っているわ」

「そんなことは気にしなくていい。家内は理解している。とりあえず、今日はゆっくり休みなさい。ルームサービスで好きなものを頼むといい。それから」

 父は財布からお札を取り出して差し出す。

「パパ、お金は持っているから」

「いいから。あちこち観光するんだろう? これで欲しいものを買いなさい。エレベーターまで送るよ」

 強引に私の手に押しつけられてしまい仕方なく受け取り、私たちはエレベーターホールへ向かった。


< 44 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop