若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「主人がどれくらい援助したのか私は知らないけれど、そうおっしゃるからにはかなりの額のようね」

「額……」

「澪緒さんは強欲だわね」

「えっ……? ごう、よく……?」

 言葉の意味がわからずに困惑する私に、彼女はフンと鼻を鳴らす。

「若旦那の財産目当てで引き受けたんでしょう? 計算高い娘になったものね」

「それって、お金目当てと言っているんですか?」

「そうよ。たしかに若旦那はどんな男も霞むくらい素敵ですけどね。あなたには手の届かない人よ。本当に主人は……。お金をかけてまで日本へ呼び寄せ、こんな高級ホテルに滞在させるなんて。私としては腹立たしい限りよ」

 ひどい言葉を投げつけられ、綺麗にメイクしてもらった顔が歪む。

 気にしてはいけない。

 冷たい空気が流れ息苦しさを覚えたとき、ドアチャイムが鳴った。

「主人かしら」

 先ほどとは打って変わって笑顔になり、彼女はドアへ歩を進めた。

 部屋に入ってきた父は目を丸くして近づいてくる。

< 49 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop