若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「それはそうだけど……」

「いいか? 澪緒には多額の援助をしている。御子柴屋の若奥さまになってもらえれば、のちのちいい投資だったと思えるだろう。それがうまくいかなくても、あの子は美人だ。金持ちを見つけて結婚させ、親孝行してもらえばいいんだ」

 私は耳を疑った。たしかに援助はしてもらった。だから、わざわざ日本まで来たのだ。だけど、父の本音を聞いてしまいショックだった。

 父は若旦那に気に入られなければ仕方ないと、私に言ってくれていたのに……。

 壁に手をついて、暴れる鼓動をどうにかして静めようとした。

「大丈夫、澪緒は私に感謝している。いざとなれば諦めて素直にどこかの金持ちと結婚するだろう」

「ええ。そうよね」

「澪緒? まだかね? もう行く時間だ」

 父の呼ぶ声に、大きく深呼吸をしてふたりのもとへ戻った。
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