若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜

　ロビーへ下りると、父はレストルームへ立ち寄ると言って離れていった。

　ひとりになってすぐ、白髪のある外国人夫婦に呼び止められ振袖を褒められる。

　先ほどの父たちの会話を聞いて気持ちが沈んでいたので、褒められて少し気分が明るくなる。

「お嬢さん！　素晴らしい！　日本人形のようだ！　その美しい着物はなんと言うのですか!?」

　年配の夫婦は人のよさそうな笑顔で近づいてきた。約一週間ぶりの英語に、私はにっこり笑顔を向けた。

「これは振袖と言います。袖が長いのが特徴なんです」

「美しい！　写真を一緒に撮ってくれませんか？」

「もちろん。どうぞ！」

　私は通り過ぎるホテルスタッフを呼び止めた。

「すみません。写真を撮ってくれますか？」

　笑顔で引き受けてくれたホテルスタッフに、男性がカメラを手渡し、私を真ん中にして写真を撮る。

　撮ってもらった写真を男性は確認して、「ビューティフル！」と喜んでいる。