若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 写真で見たように、まるで洋服を着ているかのように着物姿に違和感がなく、それどころか男の色気が漂うほど素敵だった。先日のスーツ姿もよく似合っていたけれど。
 
 一緒に写真を撮りたいと望んだのは彼なのに、その顔は笑みもなく無表情だ。

「振袖、よく似合っていますよ」

 今度は日本語で話しかけられるが、表情は硬い。目が笑っていないのだ。

「ありがとうございます」

「間違っていたら申し訳ない。俺を見て驚いたということはパーティーの出席者?」

「はい。そうです」

 会話をして印象づけなければと思うのに、なにも思い浮かばない。

 あ、彼は英語を話していたわ! そのことを話題にしてみようかな……。

「英――」

「時間のようだ。では」

 彼は私の言葉を遮り、あっけなく去っていった。

 会場の方へと向かう彼のうしろ姿をポカンと見送ったのち、ハッとして顔をきゅうっとしかめた。
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