若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「西澤社長……?」

 彼の祖母は父を覚えていないようで首を傾げる。

「おばあさま、彼女の着付けに若干問題があるので、少し席を外します。すぐに彼女と戻りますので、皆さんと会場で待っていてください。澪緒さん、行きましょう」

「え? えっ?」

 祖母の返事を待たずに彼は私の手を握り、パーティー会場とは別の出入り口へと向かっていく。

「ちょっと、待ってくださいっ。彼女に決めましたって?」

「君に決めたんだ」

「私に決めたって、あなたは今日会ったときから私が嫌いだってオーラが出ていましたよね?」

 さっきは、あんなに冷たい態度だったのに、まさか気に入られてしまったなんて。

 館内に入るドアが目の前にある。そこで彼は立ち止まり、私を見下ろした。私の身長は百六十センチで、仰ぎ見なければならないほど彼は高身長だ。おそらく百八十センチは優に超えている。

「部屋の番号は?」

「915です。でもどうして?」

 反射的に英語で答える私に彼は頷き、ドアを開けて私を館内へ進ませる。エレベーターホールまで来て、彼はボタンを押した。

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