若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「私の質問に答えていません。私が嫌いなんじゃないですか?」

「俺が君を嫌う? いやとんでもない」

 彼はしれっと言い切って、口元を緩ませる。笑顔になった彼はさらに魅力的だった。

「苦しいんだろう? 直してから話をしよう」

「直してから……? 着せてくれた人は帰っています」

「心配いらない。俺が直すから」

 ギョッと目を剥いたとき、エレベーターの扉が開いた。先に乗り込んだ彼に引っ張り込まれ、小さな箱は上昇した。



 部屋に入ってすぐ、彼は私の帯をテキパキとほどき始める。みるみるうちに私の足元にほどかれた帯が溜まっていく。

「帯に時間がかかったんです。今から直したらパーティーが終了してしまいますよ?」

 話しているうちに振袖を留めていた紐がほどかれ、慌てふためく。

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