若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 普段、ロスでの服装はTシャツとショートパンツだけれど、男性の手で帯や着物を脱がされるのは恥ずかしくて顔が熱くなっていく。

 だが彼はまったく意識していないようで、目の前の私を、感情を持たない人形みたいに扱っている。ひとりで顔を赤くしてドキドキしているのがバカらしくなった。

 すごい……スピーディーだ。

 ほとんど知らない人なのにまったく身の危険を感じないのは、彼が真剣な眼差しで着付けに向き合っているせいだろう。

「動くんじゃない」

 父の奥さんとは比べ物にならないくらい手際よく振袖の前を合わせて、紐で留めていく。

 彼は紐を唇に挟んで着付けに集中している。その姿に意思とは関係なく胸が暴れ始める。

 かっこよすぎる。絶対に女性に不自由していないはず。男性を信じていない私でも彼のビジュアルは文句なしでクールだと思う。

 しかも真剣な眼差しは色気がだだ漏れだ。

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