若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「ああ。猫のような大きな目がいい。お互い好きなところがあるのなら、まあ結婚生活もうまくいくだろう。君にはこれから着物の勉強をしてもらわなくてはならないが。店にも出てもらうことになる。一日中ゆっくりする暇がないかもな」

「店に出る? 一日中ゆっくりする暇がない、ってどういうこと?」

「働くってことだ」

「馬車馬のように働けってこと?」

 生前、母が好きだった言葉だった。

「クッ」

 彼は口元を緩ませて笑う。

「御子柴屋の若奥さまを馬車馬のように働かせるわけにはいかないな。勉強はたっぷりしてもらうが、一日中ゆっくりする暇がないというのは、跡取りをもうける行為のことを言っている」

 私は今の話の半分も理解できなかった。

「跡取りをもうける行為って……?」

 首を傾げ尋ねると、彼は一瞬驚いた顔になったのち、声を出して笑い始める。

「クックッ、その分だと日本語も勉強しなくてはならないな」

「笑わなくたって! 五歳からロスにいたから難しい日本語はわからないんですっ」

「こんなパーティーを開き、女性たちに会う理由を聞いてる?」

 父がロスに来たときに、御子柴屋の後継ぎが必要だと言っていたのを思い出して、コクッと頷く。

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