若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「それなら話はわかるだろう? 君は妊娠をして赤ん坊を産むんだ」

 そうだった。どうせ若旦那に気に入られるはずはないと思って、そのことを深く考えていなかった。

 日本へやってきて、パーティーへ出席して帰国する。それで父への恩返しができると思っていたから……。

「赤ちゃんを……」

「さてと、そろそろ行こうか。おばあさまに紹介して、この茶番劇を終わらせたい」

 戸惑う私にかまわず彼は椅子から立ち上がり、手を差し出す。

「ちょっと待って! 私の気持ちは? あなたと、そ、そのセッ……」

「絢斗さんだろう? もしくは絢斗だ。アメリカ育ちなのに恥ずかしがっているのか? そういったことはティーンエイジャーの頃からオープンだと聞いているが?」

「私は違います。男は信じていないって言ったでしょう?」

「俺を信じるも信じないも勝手だが、俺を夫にして損はないと思うが? 君の借金は俺が払おう。どの道、成果を得られないで帰国すれば借金が残るだろう?」

 お金目当てだと思われて愕然となるが、それよりも父に恩があるから来たことに意味があった。

 でも……どちらにしても私がここに来たのはお金が絡んでいるか……。

 それなら私は悪女を演じる。
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