若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「里中澪緒です」

 私は名乗りお辞儀をする。

「里中さん? お父さまはたしか西澤さんと。苗字が違うの?」

「はい。私が五歳のときに両親は離婚しています」

「まあ……そのようなお家の方と……」

 古い人だから、離婚に偏見があるみたいだ。

「おばあさま、別にめずらしいことでもないでしょう? 相手は任せていただけると約束していましたよね?」

「絢斗さん、そうですけど……」

 どうしても得体の知れない私を受け入れられない様子。

「ほら、おばあさまも納得していないよう――」

 これを機に、この話はなかったことにしてもらおうと口を開くと、絢斗さんに冷静な声で遮られた。

「おばあさま、俺は彼女しかもう目に入りません。決めましたので。よろしくご指導のほどお願いいたします」

「絢斗さん……」

 パーティーの出席者の手前もあり、大きく反論に出られない大奥さまは、ため息を漏らして口を噤んだ。

 そこへタイミングを見計らったように父がやってくる。
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