若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「澪緒の父でございます」

 へつらうような笑顔に嫌悪感を覚え、彼に握られていた手に力が入る。

 父はうまくいったと、内心この先の計画を立てているみたいに見えた。

「西澤さん、これから澪緒さんと今後の予定を立てますので、決まりましたら改めてご連絡いたします。今日はこれでお帰りになってくださっても結構です」

 絢斗さんのきびきびした物言いに、父は言葉に詰まる。

 パーティーは残り一時間ほどだ。

「い、いや、私は澪緒の保護者ですし、お話も」

 きっと父は残って今後のことを話したいのだろう。

 私はそんな父に笑顔を向けた。

「パパ、ここは大丈夫だから」

「……そうか。では夜にでも電話をしてくれ。それではふつつかな娘ですが、どうぞよろしくお願いいたします」

 父は絢斗さんと大奥さまに頭を下げてパーティー会場を去っていった。

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