若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「……ひとつだけ条件が。もしも、私があなたと結婚したとしたらなんだけど」

「条件? 聞こうか」

 まだ結婚するかもわからないので言おうか迷ったが、やはり母の二の舞だけはごめんだ。しかもモテる絢斗さんには今後も誘惑が多そうだし。

「……浮気だけは絶対にしないで」

「浮気か。わかった。君の家は複雑なようだな」

 簡単にわかっただなんて、本当なのか疑ってしまう。

 ハイヤーは運転席との間に仕切りがあり、話を聞かれることはないと考えて口を開く。

「パパはママと結婚しているときに、今の奥さんと不倫をしていたの。私には一カ月違いの異母弟がいるけど、一度も会ったことはなく、両親は私が五歳のときに離婚して、母はロスに引っ越したの」

「それは男としても許せないな。子連れでロスに引っ越したとはすごい行動力だ」

「ママは結婚前、特殊メイクアップアーティストで、日本よりもハリウッドの方が、仕事があるからと、知人に誘われて」

 絢斗さんはちゃんと話を聞いてくれて好感が持てる。

 ロスでは話もそこそこにベッドに連れ込もうとする男ばかりだった。男を信じられない私は誘惑の手には一度ものらなかった。

< 79 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop