若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 少し明かりが落とされたレストラン内の、中央の四人掛けのテーブルに案内されて、スタッフにオーダーを済ませる。

「澪緒、前回よりも綺麗になったな。さっきは驚いたよ」

「二年も経てば変わるよ」

 父がオーダーした赤ワインをソムリエが運んでくる。テイスティングを断り、グラスに赤紫色のワインが注がれた。

「乾杯しよう」

「チアーズ」

 グラスを掲げたのち、少し口に含んだ。

「パパ、仕事の用事でロスに来たの?」

「仕事といえば、そうかもしれない。澪緒、元気でやっているか? お母さんが亡くなって、今はこっちでひとりだろう、身近に相談できる相手はいるのか? 例えば親しい男友達とかなんだが?」

「親しい男友達? どういう意味?」

 父の言わんとすることが理解できず、首を傾げる。

 物心ついたときには英語中心の生活で、自宅では母が日本語を教えてくれたけれど、最近は日本人のお客さまとしかしゃべる機会がないので、言葉のニュアンスがわからないときもある。
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