若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 そっか……日本では揃えるのがマナーだったっけ。

「ありがとうございます」

 お礼を伝える私に、前を歩く江古田さんは前を向いたまま頭を下げる。

 廊下は歩を進めるたびにギシ、ギシと鳴る。

 江古田さんは突き当たりのドアがお風呂場と洗面所だと教え、手前の階段を上がっていく。そこにはドアがふたつ並んでいた。

「左側のドアが旦那さまのプライベートなリビング、右手が書斎でございます」

 江古田さんはリビングのドアを開けて中へ私を促す。

 そこはソファセットと大きなテレビ、オーディオセットがあるだけ。和モダンでまとめられているが、少し殺風景な印象を受ける。

 リビングにはドアがあって、そちらは絢斗さんの書斎だと教えてくれる。廊下とリビング、どちらからでも入れる造りのようだ。

 再び廊下に出て進むとまたドアがあった。

「こちらがお部屋になります。お隣が若旦那さまの寝室です。では、のちほどお荷物をお持ちします」

「ありがとうございました」

 去っていく江古田さんを見送ってから入室する。
< 82 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop