若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 そこは畳の部屋で、和ダンスと古めかしいドレッサーがあった。鏡は三枚からなっていて折りたたまれている。床に座って使うタイプのものらしい。

「すごい年代物みたい……私、ここで過ごすの?」

 畳の上には平べったいクッションみたいなものが一枚ある。

 白い紙が貼られた戸のようなものを引いてみるとガラス窓になっていた。そこから庭と、その先には民家やビルなども見える。

 ここでやっていけるの……?

 なにもかも今までの生活と真逆になりそうだ。

 不安が心に広がり、考え込んでいるところへドアがノックされ、返事をしてすぐに江古田さんがキャリーケースを運んできた。

「こちらへ置いておきます。大奥さまがすぐにいらしてほしいと」

「わかりました」

 おばあさまのところへ行けば絢斗さんがいて、この不安が少しは払拭されるかもしれない。

 今日初めて会ったが、唯一、数時間一緒に過ごした人だ。ここでは頼る人は彼しかいない。

 江古田さんの案内でおばあさまのもとへ向かった。

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