キミに幸せの花束を
この人たちなら私を助けてくれるんじゃないかと期待してしまう。


でもその期待は無駄なだけで、逆に彼らを傷つける。


瑞希と瑞希の大事な人たちを傷つけるわけにはいかないから…


「じゃあ最後にこれだけ」


「…なんでしょう?」


「どうして好きでもない、ましてや暴力を振ってくる男から逃げない?」


暴力という単語が出たとき、瑞希が不安そうな瞳で私を見た。


…瑞希は優しい子だもんね。


私は瑞希の頭をそっと撫でた。


驚いている瑞希に小さく微笑む。


「知らない方が幸せなこともあるの」


これからもずっと瑞希は知らなくていい。


もちろん、あなたたちも。


傷つくのは私だけでいいよ。


私は皆に背を向けて、今度こそ屋上を後にした。


「授業さぼっちゃおうかな…」


でも授業の単位危ないかも…私ずっと空き教室とかで寝ているせいで。


悩んだ末、結局その日は教室に戻って午後の退屈な授業を受けて家に帰った。


──────

「ただいま」


家に着くと珍しく悠斗さんの姿がなかった。


良かった…今日は怒られなくてすむかもしれない。


リビングを通って自分の部屋へと向かう。


白とピンクを基調とした女の子らしい部屋は悠斗さんが用意してくれた。


悠斗さんは基本私にだけとても優しい。


…そして私に以上なほど執着している。


悠斗さんは私にする束縛も、暴力でさえも、愛しているから故の行為だと言う。


そんな悠斗さんを私は愛せない、けれど彼の世界には私しかいない。


ただ瑞希のことを守るためだけじゃなくて…なんだか彼のそばに居てあげないといけないような気持になった。


今にも壊れてしまいそうな悠斗さんの心が悲鳴をあげている気がしたから…






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