キミに幸せの花束を
極悪非道と悪名高い佐伯組。


人殺し、クスリ、強姦なんて当たり前の荒れた酷い組。


そんな場所で産まれた悠斗さんはいつも孤独だったと言っていた。


悠斗さんに見向きもしなかったという組長である父と、幼い頃に病気で死んでしまった母を両親にもった悠斗さんは愛を知らなかった。


悠斗さんは組長であるお父さんに自分を見て欲しくて頑張ったんだと前に話してくれたことがある。


認めてもらうためにたくさん人には言えないことをしてきたというのも…


幼い頃から武道や銃の使い方を教わるなんて普通ありえない。


それだけずっと1人で頑張ってきたんだって思った。


その話を聞いた時、私が傍に居てあげなきゃいけないと思った。


例え過去にどんなに悠斗さんに酷いことをされていても…


それは同情かもしれないけれど、1人ぼっちは寂しいから。


…私も、その怖さを知ってるから。


でもそんな時に神竜の皆と出会って、一緒に居たいと思ってしまった。


類の笑顔を見ると胸が苦しくなるけど、とても幸せな気持ちになれるから…


でも、きっと誰も傷つかない方法は私が悠斗さんの傍に居ること。


それで神竜の皆が無事なら、悠斗さんの心の寂しさが埋まるならそれでいい。


そう頭では分かっているはずなのに、心がそれに反抗する。


悠斗さんに殴られた体はボロボロで、どこもかしこも痛くて苦しくて。


心が時々壊れてしまいそうになる。


ーガラッ


窓を開けてベランダに出ると、マンションの最上階から見える綺麗な景色が広がる。


下を見ると人も車もとても小さく見える。


足がすくむほど高いこの場所から落ちてしまえば、きっと楽になれるのだろう。


いつの間にかそんな考えが頭に浮かんでいて、ベランダの手すりに手をかけて身を乗り出していた。





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